学部生に加えて大学院でも奨学金を借りていると、期間だけでみても借入額は学部生だけの人と比べて1.5倍となります。
当然月々の返済額も多くなるので、返済に対する不安も大きくなります。
そんな学生におすすめなのが日本学生支援機構の「特に優れた業績による返還免除」です!
この制度により奨学金の全額または半額を返還免除となります。しかも約3人に1人が免除となります。
この免除制度の素晴らしいポイントは、学業に対する努力次第で免除になる可能性があることです
特に優れた業績による返還免除とは?

特に優れた業績による返還免除(以下、返還免除)とは、
「大学院で第一種奨学金の貸与を受けた学生であって、貸与期間中に特に優れた業績を挙げた者として日本学生支援機構が認定した人を対象に、その奨学金の全額または半額を返還免除する制度です。
独立行政法人日本学生支援機構 「特に優れた業績による返還免除」
学問分野での顕著な成果や発明・発見のほか、専攻分野に関する文化・芸術・スポーツにおけるめざましい活躍、ボランティア等での顕著な社会貢献等も含めて評価し、学生の学修へのインセンティブ向上を目的としています。」
大雑把に言うと、
もし大学院で頑張って良い業績を残せたら、奨学金の返済を免除してあげるから大学院生活がんばって勉強してね
というものです。まさに餌ですが、この餌に食らいつかないのは勿体ないです!
奨学金返還免除を申請できる対象者
対象は
「大学院(修士課程・専門職学位課程・博士(後期)課程)第一種奨学生で、当該年度中に貸与終了する人。」
つまり、以下2条件を満たすものが申請できます
①日本学生支援機構の第一種奨学金を借りている大学院生
②奨学金を借り終える年度(通常は卒業年度)に申請できる
総免除者数自体は、貸与終了者数の30%と決まっています。
(博士後期課程に関しては、平成30年度以降は30%→45%に増加(但し全体で1200人を上限とする))
つまりは、日本学生支援機構の第一種奨学金を借りている大学院生の約3人に1人が確実に全額もしくは半額免除になるということです。
給付型の奨学金の競争率に比べたらはるかに可能性を感じますね。しかも奨学金の貸与が決まってしまえば、免除に関しては経済状況は関係なく学業成績のみで決まります。
申請から免除になるまでの流れ
返還免除の申請をしてから実際に免除の通知が来るまでの流れは以下の通りです。
①返還免除の申請書を提出(卒業年度の1月頃)
②学内(学部内)の選考を経て、推薦者となる(卒業年度の3月頃)
③日本学生支援機構による審査
④免除の決定(卒業後 6月頃)
①返還免除の申請書を提出は自分が書くか書かないかだけです
③日本学生支援機構による審査は99%通ります。
問題は、②学内(学部内)の選考を突破し推薦者となることです。
逆に②学内(学部内)の選考さえ突破できれば免除はほぼ確実ということです。
それでは②で評価される項目を確認していきましょう
変換免除にために評価される業績と評価方法
日本学生支援機構が定める評価基準(下表)に基づき、各大学が具体的な評価項目を設定し、総合的な評価を行います。
日本学生支援機構が定める評価基準は以下の通りです。
- 「学位論文その他の研究論文」
- 「大学院設置基準第16条に定める特定の課題についての研究の成果」
- 「大学院設置基準第16条の2に定める試験及び審査の成果」
- 「著書、データベースその他の著作物」
- 「発明」
- 「授業科目の成績」
- 「研究又は教育に係る補助業務の実績」
- 「音楽、演劇、美術その他芸術の発表会における成績」
- 「スポーツの競技会における成績」
- 「ボランティア活動その他の社会貢献活動の実績」
まず、2~5に関しては普通の大学院生には関係無いので基本的に無視で大丈夫です。
8.「音楽、演劇、美術その他芸術の発表会における成績」と 9.「スポーツの競技会における成績」 は体育大学や芸術大学以外は関係ありません
一般大学の場合も「専攻分野に関係した…」という条件付きなので、部活動などの成績は考慮されません。
次に、6.と7.ではほとんど差が付きません
6.「授業科目の成績」:授業の成績もそこまで差はつきません(かといって、得点にはなるので授業成績を疎かにするのはダメです)
7.「研究又は教育に係る補助業務の実績」:TA・RAはほとんどの学生がやっていると思います
10.「ボランティア活動その他の社会貢献活動の実績」も評価はされるので免除申請と関係無くボランティア活動をしていたらそれはGoodですが、免除のためにボランティアをするのはナンセンスです
免除のカギとなるのは残された1.「学位論文その他の研究論文」です
1.「学位論文その他の研究論文」で評価されるのは、
「学位論文の教授会での高い評価,関連した研究内容の学会での発表,学術雑誌への掲載又は表彰等,当該論文の内容が特に優れていると認められること」
つまり、学会発表と投稿論文が評価の対象となります。
特に、学会発表は 国際学会>全国規模の国内学会>全国規模以下の国内学会 の順で評価され、
論文投稿も国内誌よりも国際誌が評価されます。
学位論文も評価の対象にはなりますが1本分しかありませし、全員が書きます。
つまり「国際論文投稿と国際学会発表の数が奨学金返還免除を決める」と言っても過言ではありません
※これらの評価項目に関して、各校に規定があるので詳細は学務などに確認してください。
(論文などは本数に関わらず、最高評価の1本のみが加点される場合もあります)
学会発表と投稿論文の評価内容

ここからの評価内容は、私の大学の場合での評価方法を基にした考えですが参考にはなると思います。
学会発表と投稿論文のポイントを稼ぐためには、国際学会での発表と国際雑誌への論文投稿がベースになります
学会発表は国内開催の国際学会を狙え!
まず学会発表は国際学会での発表のポイントが高いので、国際学会を狙います。
しかし、国際学会での発表は研究室の資金力によっては、行かせてもらえない場合があります。行かせてもらえたとしても自費での遠征となり、ハードルが高くなる可能性があります。
そんな人も心配は無用です。わざわざ海外で発表をしなくても大丈夫です。
なぜなら、日本国内開催の国際学会も国際学会としてカウントされるからです
これによって交際学会遠征費用を大幅に抑えることが可能です。
また、特殊かもしれませんが海外の交友大学との交流発表会も国際学会としてカウントされていました。
交流発表会の場合、学会に比べると発表のハードルも下がります。
遠征費用も日本開催の場合は当然費用も掛かりませんし、相手国開催の場合も遠征費用のある程度を学校側が負担してくれたので自己負担はほとんどありませんでした。
国際学会のポイントは、タイミングが合えば日本開催の国際学会で稼ぐのが効率的です。
逆に、たとえ英語発表だとしても国内学会は国内学会としてカウントされてしまうので注意してください。
国内発表も疎かにしてはいけません。
国内学会の場合、地方規模の学会よりも全国規模の学会の方が評価されます。
どちらで発表するにせよ必要な労力はそんなに変わらないと思います。
だったら地方の学会で発表するくらいなら全国規模の学会で発表をして少しでもポイントを稼ぎましょう。
全国規模の学会だと多少遠征費がかかる場合もありますが、免除の金額に比べたら必要経費だと考えましょう。
論文投稿は期限に注意
論文投稿は費用的な問題などはそこまで無いと思うので、後は気力で本数を稼ぐだけです。
免除の評価に投稿雑誌のインパクトファクターは関係ありません。評価に関係するのは国内誌か国際誌だけです
もちろん国際誌への投稿は英語論文となるので国内誌に比べ労力はかかります。しかしながらそもそも大学院生の論文投稿の場合ほとんどが英語論文だと思うので迷うこともないでしょう。
論文投稿では注意すべき点があります。
それは免除申請時点で論文がアクセプトされていることです。
通常、返還免除の申請書を提出するのは卒業年度の1月ごろになります。
評価される業績もこのタイミングで記載しなければいけません。
つまり、この時には投稿論文がアクセプトされていなければいけません。掲載はまだされていなくて大丈夫です。
査読期間を考慮すると少なくとも3か月前の10月ころには投稿を終えておくのがいいでしょう。
こう考えると実際に活動できる期間は大学院生活のうち1年半程度しかありません。学部生時代から、研究と論文執筆の工程は並行して進め、大学院に進学したらバンバン投稿に動けるように準備をしておきましょう。
免除申請のポイント

奨学金を借りる時の借入額は多い方がお得
大学院の第一種奨学金を借りる時の金額は月々5万円か8.8万円か選べます。
全額免除になった場合、
貸与月額5万円の場合は120万円が免除に
貸与月額8.8万円の場合は約211万円が免除なります
免除の審査に借入額は関係ありませんので、免除が決定した場合は貸与額を多い方を選択した方がお得になります。
決して多くした分の借入額を無駄遣いしていては元も子もないので気を付けてください。
推薦書の下書きは自分で書く
免除申請には、指導教員等の推薦書が必要となります。しかし大学の先生にとってこの推薦書を書くことは何の利益にもなりません。
普段からの関係にもよりますが、いずれにせよ推薦書の下書きくらいは自分で書くようにしましょう。先生の負担も減らすことができますし、自分のアピールポイントを納得がいくように書くこともできます。
研究の時間がアルバイト代わりになる
「研究ばかりしているとアルバイトをする時間が無くなってしまう」と考える人もいると思います。
しかしながら、もし免除申請が通れば自分の専門分野に対する知識と業績がお金になるってすごくないですか?
研究ばかりでアルバイトをする時間が無い大学生にとってこれ以上嬉しいことは無いでしょう。
免除基準で大切なのは全国ではなく学内で何番目か
始めに「②学内(学部内)の選考さえ突破できれば免除はほぼ確実」と言った通り
免除のポイントは学内で比較して優秀な評価を得ることです。
全国で何番目かは全く関係ありません
免除に関してだけ言えば、
東大大学院で真ん中くらいの成績の学生よりも、無名の大学院でTOPの成績を収めている学生の方が有利だと言えます!
つまりは、入試までの成績は関係なしに、大学に入ってから頑張って知識・業績を身に付けた人ほど免除になるチャンスがあるというわけです!
何度も言いますが、
免除になるために大切なのは 学内(学部内)での評価で上位にいることです
まとめ
大学院生限定ですが、日本学生支援機構の「特に優れた業績による返還免除」制度は申請の価値ありです!

自分の努力次第で奨学金の返還が免除になるかもしれない、というのはモチベーションが上がるね!!

そうだね!学会発表や論文投稿は大学院生なら普通にやっていることだしね!
・免除になれば大学院時代の奨学金の返済が全額又は半額免除になる
・「免除」=「自分の学業の実績がお金になる」
・免除のポイントは論文投稿と学会発表。そのための実績づくりは計画的に
・免除になるために大切なのは、全国ではなくて学内で自分が上位にいること
・免除になるかどうかは自分の努力次第
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